広島高等裁判所松江支部 平成10年(行コ)1号 判決 1999年9月10日
控訴人
福田採石株式会社
右代表者代表取締役
福田盛乙
右訴訟代理人弁護士
錦織正二
被控訴人
石見大田税務署長 岡野政則
右指定代理人
内藤裕之
同
長尾俊貴
同
要田悟史
同
好中和儀
同
松田亮
同
甲斐好徳
同
祖田定
主文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
一 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人が控訴人の平成二年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度の法人税について平成五年七月三〇日付けでした更正処分及び無申告加算税の賦課決定を、いずれも取り消す。
3 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。
二 事案の概要
本件の骨子、争いがなく又は証拠上容易に認められる前提事実並びに争点及びこれについての当事者の主張は、次に付加、訂正するほか、原判決「事実及び理由」中の「第二 事案の概要」に記載のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決九頁八行目の「本件採石料は、」の次に「本件業務提携契約に基づく本件A採掘権の使用料とは無関係に、」を加える。
2 原判決一五頁一二行目に「五三条二項」とあるのを「五三条二号」と改める。
3 原判決二八頁四行目の次に、改行して、次のとおり加える。
(五) 当審において追加した主張
控訴人は、本件係争事業年度に、本件確定申告書に掲記した費用とは別に、以下の経費を生じていた。これら申告書への計上漏れ額(総計四九八六万八一七一円)は、いずれも福田採石(有)の支払うべき債務であるが、控訴人が採石業を継続していくために必要な費用として、本件採掘権使用料である六〇〇〇万円にはこだわらず、採掘権使用料又は採石料として福田採石(有)に現に支払ったものであるから、損金として認められるべきである。
<1> 安黒商店に対し 六〇万〇〇〇〇円
<2> 三和興業株式会社に対し 一〇万〇〇〇〇円
<3> 有限会社飯島自動車に対し 二〇万〇〇〇〇円
<4> 玉木正夫に対し 四万五〇〇〇円
<5> 出雲社会保険事務所に対し 七二〇万〇〇〇〇円
<6> 出雲労働基準監督署に対し 二〇〇万〇〇〇〇円
<7> 有限会社切川物産及び有限会社木村火薬銃砲店に対し 五六九万〇八一一円
<8> 有限会社田原石油に対し 七三万二五六三円
<9> 三菱鉱業セメント株式会社に対し 九三万九九三〇円
<10> 総合商事有限会社に対し 三万五〇二〇円
<11> 竹下清作に対し 二三四万〇九八〇円
<12> 呉堂財生に対し 二七〇万〇〇〇〇円
<13> 中村芳男に対し 三五〇万〇〇〇〇円
<14> 大社信用組合に対し 一八九万三六四八円
<15> 福田順伍らの金融業者に対する借入返済金又は支払利息金 一一一万九三四二円
以上合計 二九〇九万七二九四円
<16> 朝山組株式会社に対し 二〇一六万八四〇〇円
<17> その他 六〇万二四七七円
(右追加主張に対する被控訴人の反論)
控訴人が主張する金額について、これらを控訴人が現に支払ったと認めるに足りる証拠はない。仮に支払が現にあったとしても、これらは福田採石(有)の債務を代位弁済したにすぎないのであるから、そもそも当然に弁済者である控訴人の損金となるべきものではない。
三 当裁判所の判断
当裁判所も、控訴人の請求は棄却すべきものと認定判断するが、その理由は、次に付加、訂正するほか、原判決「事実及び理由」中の「第三 争点に対する判断」において説示するとおりであるから、同説示を引用する。
1 原判決二八頁八行目の「福田順伍」の次に「(原審)」を加える。
2 原判決三五頁七行目に「債務を」とあるのを「本件和解債務を債務者でもない」と改める。
3 原判決三六頁三行目に「可能であると認められる」とあるのを「不可能であるとは到底いえない」と改める。
4 原判決三七頁三行目の「主張し、」の次に「承認福田順伍(当審)及び」を加える。
5 原判決四〇頁一二行目の「本件採石料が」の前に「帳簿上これとは別に計上された」を加える。
6 原判決四二頁三行目に「性質上」とあるのを「性質に従い」と改め、同頁四行目の次に、改行して、次のとおり加える。
控訴人が当審において追加主張した諸経費については、いずれも福田採石(有)の支払うべき債務のうち六〇〇〇万円を超えて控訴人が代位弁済したものであることがその主張上明らかであるから、現に支払があったか否かを問わず、法人税法上これを損金の額に算入することはできず、また、これらにつき貸倒処理をする根拠がないことも、以上と同じである(なお、<1>は本件採石料のうち安黒商店に現実に支払われた六〇万円と重複するものと思料されるし、その他の支払についても、それらを客観的に証する帳簿書類の提出がなく、支出の経緯その他取引の個別具体的な内容が何ら明らかでない上《甲一の1に記載された審査庁の調査結果でも、この点が十分解明されているとはいえない。》、<5>、<6>、<7>、<9>、<11>、<13>、<14>などは領収証など金員移動の事実を端的に証する書証もなく、<16>に至っては、乙一六のような反対証拠も存する有様であるから、控訴人が本件係争事業年度内にその主張する支払を現に行ったとは、証拠上認め難いというほかない。)。
よって、原判決は相当であって、本件控訴は理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。
(平成一一年七月一四日口頭弁論終結)
(裁判長裁判官 角田進 裁判官 石田裕一 裁判官 水谷美穂子)